移住しました その11「ドラクエが教えてくれた人生のしくみ」


震災から2年が経ち、クリキンディは完全に迷路に入っていました。
この毒の沼地から抜け出したい、
だけどどこに行けばいいのか、どこに道があるのかまったくわからない。

ブルネイは本当に平和でいい国でした。
ですが、そこに移住した自分を想像した時に「あ、違う」と感じたのも確かです。
観光で訪れるからこそ楽しいのであって、私の生きる目的はここにはない気がする…。
では私の生きる目的とは一体なんなのかと言われれば、まったく掴めていませんでした。

そもそも、私は本当に平和を求めているのだろうか、

美輪明宏さんが以前テレビで「極楽の100年より穢土の1日」と言っていたことを思い出しました。
つまり何もかも思い通りで、なんの障害もなく、みんな仲良しで足りないものはない、
そんな世界で暮らしている自分を想像してみると、確かにすぐに飽きてしまいそうです。

たとえば、ストーリー性のあるゲームをしているとしましょう。
敵も味方もなく、常に所持金や必要な道具が満タンで、ゴールまでの道のりがスムーズ過ぎたら、
…そりゃ面白くないですよねー。
だからと言って、ものすごくレベル上げをしないと先へ進めないゲームや、
謎解きが難し過ぎるものは途中でイヤになっちゃう。
ちょうどいい障害と言えばいいのでしょうか、それぐらいのものが乗り越えた時に楽しい!と感じるわけで。

変な例えと思われるかもしれませんが、
人生ってあまりスムーズ過ぎても幸せと感じられないのかもしれない、と思うのです。
でもだからと言って「毒の沼地」で暮らし続けるのはどう考えても辛過ぎる。
もういくつ薬草があっても、いくつ毒消し草があっても足りません。
ストーリーを進めるどころか、HP回復だけで毎日が過ぎていきます。

こんな時は、だいたい「ものすごい大事な宝物」がこの町にあるんですよねー。
もしくは、ここにラスボスがいて、後でまた訪れることになるけど、
今はまだレベルが低いのでとりあえず別の町へ…
どっちへ行けばいいのか町の人にヒントを聞いてから……

あれれ?
いやいや、ドラクエと現実は違うからー。
でも、よくよく考えてみると、これって人生そのものかもしれないと思い始めました。

生まれる前に大まかに自分の人生を決めてくると言われていますよね。
男として生きるのか女として生きるのか、
誰を両親にするのか、どんな地域に生まれるのか、
そこでどんな人に出会うのか、どんなイベントがあるのか、どんな職業につくのか、etc…
もしかしたら天国ではこんなことになっているのかもしれません。

「次の人生ゲームどれにしよっかなー、この間やったのは”ゼロ戦ライダー”だったから、
今度は”宗教ツクール”で教祖になってみようかなぁ。
あ、新作出てるじゃん、”終末アセンションvsフリーメーソン”か、これ面白そう!これにしようっと。
戦闘能力はまぁまぁで、サバイバルレベル高めに設定して、と…」

3次元に生まれるってこういうことだったりして…。
だとすれば、プレーヤーとキャラクターの関係が
「ハイヤーセルフ」と「3次元の自分」になりますね。
敵が現れてピンチの時には
ハイヤーセルフがコントローラを振り回してがんばってるんですよ、きっと。
もし失敗してHPがゼロになっちゃっても、
セーブポイントにデータがあるから、ちょっと前からやり直し。
それまでのジョブステータスがある程度引き継がれます。

そしてこの同じゲームをプレイしている人はひとりじゃなさそうです。
地球という名のネットワークゲーム機を使ってプレイしているのは、
70億人あまり。大人気でどんどん増えています。
そのうち”終末アセンションvsフリーメーソン”を選んでプレイしている人は何人いるんでしょうね?
同じ世界に生きているように見えて、それぞれの視点とストーリーが違っているし、
何度も同じゲームをしている人もいて、セーブポイントごとに少しずつ違うストーリーがあるのは、
まさにパラレルワールドです。

RPGをプレイしたことがない人には、なんの話なのか伝わり辛いですね。
でもやったことのある人にはすぐ納得できる話だと思います。
ストーリー上必要のある場所には、行かないことにはその先へ進めないし、
今はまだ行ってはいけないマップは、空飛ぶじゅうたんとか船とか手に入れたり、
誰かに出会わないと行けないようになっていたり、
猛毒の沼地に囲まれていて、新しい魔法を手に入れないと進めなかったり…。

右の道を進むか左の道を進むか、
迷った時に本当に決断していたのは、ハイヤーセルフだったのかもしれません。
天使とか守護霊とか呼ばれる存在は、ハイヤーセルフそのものかもしれないし、
もしかしたらゲームしている人を見ている外野の声かもしれません。
「そっちじゃないってば!そこは落とし穴があるよ!」
「いやいやでも落とし穴に落ちないと手に入らない宝物があるよ」
「待って、今HP少ないから宿屋で回復してから落とし穴に落ちないと危ないよ」

ちょっとふざけているように見えますが、
こんな風に考えたら、いろんなことに合点が行きませんか?
なんとなくクリキンディの人生がずっとそこで足踏みしているような気分だった理由は、
これだったのかもしれないと思えてきました。

ゲームに興味などなかったクリキンディ、
なぜか妊娠してから狂ったようにプレイしまくったのにも、ちゃんと意味があったんですね。
まさに「生きるためのヒント」が山盛りでした。

そう考えてみると、本当に無駄な出来事はないと思えます。
一見不幸に思える出来事も、それを経験しないと見えない風景や手に入らない宝物がある。
誰かに会って話をしないと進まないストーリーがある。
すべてが必然。それが本当に腑に落ちました。
そして、そもそもなぜ人は生きるのか、その答えのようなものもここにありました。
いろんなことを体験したい、見たい、 感動したい、出会いたい、極めたい…

もう迷いはありませんでした。
行き先なんか決めなくてもいい、とにかくここを出よう。
クリキンディの心のコンパスの針がまっすぐその道を指しました。
ひとまず今までの人生で手に入れた経験値だけを持って、あてのない旅に出よう、
いろんな町をまわって、住みたいと思える場所があればそこに定住しよう。

(その12につづく)

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ブログ版をかなり加筆、修正しています。


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