疎開する友人へ


被災地に暮らしているクリキンディですが、
地震や津波の被害があまり大きくはなかったため、
半年経って、ほぼ日常に戻りつつあります。

放射能の数値について、
この町の人たちはあまり気にしていません。
というより、気にしてもしょうがないし、とか
こわいから考えること自体を心が拒否、という人もたくさんいます。
だから、食べ物にも子供たちの外遊びにもあまり気を使っている人はおらず、
疎開している人もクリキンディのまわりにはいません。

そんな中、職場の仲間が、
「放射能がこわいので、北海道か四国に異動を希望します」
と申し出たという噂を聞きました。

その時、噂を聞いていた人は、数名でしたが、
ものすごく複雑な空気が流れたように感じました。

そのほとんどは、
「あいつ、気にし過ぎなんだよ」
という軽蔑に似た感想でしたが、
その言葉の奥に、かすかに、
「やっぱり疎開した方がいいんだろうか…」
「いやみんな普通に暮らしているし」
「いいな、こいつはしがらみがなくて、この土地を離れられるんだ」
という感情が渦巻いたように見えました。

「正常性バイアス」という言葉が、
ぴったりハマる状況というのはこういうことですよね、きっと。

放射能が身体に与える影響について、
あえて、誰も研究していないように見えませんか?
これから何十年かの間に、
少しずつ、何かの病気が増えたり、
これから生まれてくる子供たちに影響があるかもしれない、
だけど、その関連性をちゃんと調べようとしている人がいない。

すでに体調不良を感じている人の原因が、
放射能であるかもしれないことに、
医療関係者は気付いているのかもしれません。
それでも、「原因は放射能ですね」という医者は、今はほとんどいないでしょう。

もう自分を信じるしかありません。
クリキンディは、この町を離れることに、
あまりためらいはありませんが、
今、その時ではないように感じています。

異動を希望した友人が、
自分の直感を信じて行動しているのなら、心から応援したいと思います。


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