「君はだれ?なぜそんなことになってるの?」
何もない空間に、
ひとりの人らしい形をしたものがいる。
「金髪の青年を探してるんだけど、どこにいるか知らない?」
ハチドリのクリキンディが話しかけた相手は
何も言わずそこにゆらゆらと立っている。
それは、顔が半分しかなかった。
そして、身体じゅう、真っ黒に見える。
まるでコールタールが張り付いているようだ。
うつろな目はどこを見ているのかわからないし、
口のように見える部分からも、言葉が出ることはなかった。
もしかして…
君が、あの金髪の青年なの…?
もしかして…
ぼくがあんなことをけしかけたせい…?
金髪の彼が少年だった時には、
地球上を探検した。
彼が青年になった時、
彼の作り出した街を、原子爆弾で粉々に吹き飛ばした。
自分で作った爆弾で被爆した、ということ…?
想像の世界なのに?
自分の行動の責任をとったということ?
そうか…
すごい経験をしたんだね。
金髪だった彼に聞こえているのかわからないままに、
クリキンディは話し続けた。
チェルノブイリの事故処理にあたった人の、ドキュメンタリー映画を見たことがあるんだ。
メルトダウンして爆発した炉心を、コンクリートで固める処理が行われたんだけど、
その作業員たちは、順番に列を作り、
走って炉心まで行き、
そこで30秒とか1分とか、時間を決めて作業をして、
また走って帰ってくる。
そうやって、少しずつ被爆させられたため、
肉が少しずつ溶けて落ちて、
骨が見えているのに、死ぬこともできず、
長い間苦しんだんだって。
君もすごく辛いんだろうね…
ごめんね、わかってあげられなくて…
また…、来るよ。
<本当の彼とハチドリ>につづく
←うう、めっちゃ重たい話になっちゃいました。もうショートショートじゃないっすね…
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