「クリキンディの創った話とか音楽とか」カテゴリーアーカイブ

ひとばしら〜あとがき〜

創作「ひとばしら」いかがでしたか?

すでにお気づきの方もいらっしゃると思いますが、
これは、実際にあったお話を、クリキンディが脚色したものです。

ケイコさん(仮名)は、霊能者に、この前世の出来事を伝えられて以来、
ずっと自分を責め続けており、さぞかし苦しかったことと思います。

平岡さん(仮名)は、そんなケイコさんの事情を知らずに、
このことをたまたま話題にしたそうなのですが、

それ、どう考えても必然、ですよね。
ケイコさんと平岡さんが、
本当に親子だったのかどうか、それはわかりません。

でも、おそらく似たような時代を生き抜いて、
同じような苦しみを抱えていたのは、
この二人だけではないと思うのです。

自分の立場と、考え方だけでは、計れないものがある、
いろんな感じ方、見方がある、ということに気付くだけで、
楽になれることもあるんだなぁと思います。

こんな風に人の心がほどけていく瞬間に立ち会えるのは、
すごくうれし〜〜〜〜!!

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ひとばしら〜その3〜

<ひとばしら〜その1〜>
<ひとばしら〜その2〜>
のつづきです。

「あら、ケイコさんも、こういう話に興味あります〜?」

聞けば、取引先の女性、平岡さんは、
最近ヒプノセラピーを受けたのだそうだ。

「そこでね、なんか映像が浮かんできちゃったんですよ。
自分が、キレイな赤い着物を着せてもらって、
普段は食べられないような、お餅をもらって、
すごくうれしいと思ってる映像が!」

「え?うれしいんですか?平岡さん、これから生き埋めになるのに?」

「ええ、確かに、土をどんどんかけられて、
息苦しいなぁ、イヤだなぁ、と思う気持ちもあるんですけど、
この過去生の時、私はちょっとおつむが弱かったみたいなんですよね〜。
だから、赤い着物やお餅がうれしくて。」

ケイコは、あの時の霊能者の話をハッキリ思い出していた。
あの時、差し出した自分の娘も、知的障害を持っていた。
もしかしたら、
平岡さんが、あの時の自分の娘?!
だとしたら、とても言えない…。
ごめんねって、何万回言ったって、きっと許してもらえない。

「ケイコさん、大丈夫ですか?顔色悪いですよ。」
平岡さんが覗き込む。

「ケイコちゃんは、怖がりの癖に、こういう話、好きなのよね。
社員旅行で箱根に行った時も、ブルブル震えながら聞いてたもんね〜」
と同僚に突っ込まれて、顔の左半分で笑い顔を作る。

「それでね、あの時、私は、おつむが弱くて、何もできなくて、
家族のお荷物になっている、ってことを認識してたんでしょうね。
だから、人柱に立つことで、私が、人の役に立つことができる、
そのことが、とても誇らしかったんですよ。
いつも悲しそうな家族に、何かしてあげたい、そう思い続けていたんですよね。」

「へ〜、人柱になった人って、みんな恨みを持ってるのかと思ってましたよ〜」
同僚の相づちに、ケイコも、慌てて頷いた。

「ただ、ひとつ後悔があって…
私、言葉がうまくしゃべれなかったから、
あの時、泣いているお母さんに、ちゃんと別れの言葉を伝えられなかったみたいなんですよね。
私が、ちゃんとしゃべれなくて、頭も悪いせいで、
お母さんがいじめられて、ごめんねって言いたかったんだと思うんですよ。
だけど、人柱にしてくれたから、やっと自分も、お母さんの役に立つことができた、
しかも、赤い着物においしいお餅ですよ!
うれしかったという思いが強かったですね〜。」

「あ、もしもし…」
ケイコは、鳴ってもいない携帯電話を耳にあてて、
平岡さんと同僚に、軽く会釈すると、
急いでトイレに駆け込み、しばらくおいおい泣いていた。

ケイコの強張っていた背中が、すーっとやわらかくなった。

(完)

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ひとばしら〜その2〜

<ひとばしら〜その1〜>のつづきです。

興味半分で、霊能者のもとを訪ねたケイコ、
しかし、そこで、前世の自分が「自分の娘を人柱に差し出した」と言われ、
ケイコの心は罪悪感でいっぱいになっていた。

この後に、なんと言われたのか、よく覚えていない。
レコーダーを持っていって録音しておけばよかった…
そう思ったけれど、後の祭だった。

障害を持って産まれた子供は、
あの時代、一生隠れて暮らすしかなかった。
土蔵で一生を終えるくらいなら、
人柱に立つことで、お城を守るお役に立つのだから、
とみんなに説得され、
首を縦に振るしかなかった。

「あなたは、娘のことを愛していたし、娘もそれをわかっていたのよ。
彼女は、人柱に立つことを、むしろ誇らしく思っていたの。
だから、あなたが現世で罪悪感を持つ必要はないのよ。」

そう霊能者は言っていたと思う。

「あなたが、今の人生で先に進めないのは、
この時の悲しみの記憶が、心の奥底にあるからなの。
もう手放しましょうね。自由になっていいのよ。」

そんなことも言われた気がする。

だけど、
罪悪感を持たない、なんて無理…
だって、自分が産んだ子でしょう?
どんな障害があったって、手放すなんて考えられないし、
今の私なら、絶対に「うん」と言わない。
自分が人柱に立ったって、娘を守るはずだわ。
なぜ…

ケイコは、この日以来、今までに試してきた、
スピリチュアルリーディング、チャネリング、ヒプノセラピーなど
一切のセラピーを封印してしまった。

霊能者が、ケイコに、人柱のことを語ってから、数年が経っていた。
あの日以来、涙腺のスイッチがおかしいと、自分で思う。
ここ、普通泣くとこでしょ?と思うところで泣けなかったり、
突然涙があふれてきたりする。

胸の奥に、時折、チクリと痛みが走ることはあったけれど、
あの日のことを、思い出すことはほとんどなくなっていた。

そんなある日、
職場でたまに顔を見る、取引先の女性に、
ケイコが書類を持っていった時のこと、
すでに、打ち合わせは終わり、会話は雑談に入っているようだった。

「それでね、私、昔、っていっても、今の自分じゃないですよ、
生まれ変わりってあるじゃないですか〜、
その生まれ変わる前の人生で、
橋が流されないように、人柱に立って死んだことがあるらしいんですよ〜」

打ち合わせテーブルから離れようとしていたケイコは、
ぎょっとして思わず振り返った。

「い、今、ひとばしら、って言いました?」

<ひとばしら〜その3〜>につづく

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ひとばしら〜その1〜

泣けなかった。
涙腺にスイッチがあるのだとしたら、
たぶん、壊れたんだと思う。
それほど衝撃的だった。

*****
「ああ…あなた、”人柱”って知ってますか?」

よく当たると言う霊能者のもとを訪ねていたケイコは、
軽い気持ちで、恋愛相談をしようと思っていた。
しかし、その霊能者が、いきなり顔をしかめて、人柱のことを話し出したのだ。

「人柱、ですか?聞いたことはありますけど…詳しくは…」

「そう、そう…人柱はね、例えば、橋を架ける時や、お城を建てる時なんかにね、
洪水や、敵の攻撃から守ってもらうための、お守りみたいな存在ね。」

「あの…、生きながらにして埋められるって聞きましたが…」

「そう、そう、よく知ってるじゃない。」

なんだか、コワイ話しになりそうだな、とケイコは感じていた。
面白半分な気持ちはすっかり萎えている。
まさか、自分が、前世で人柱に立ったことがあるとか、
その恨みが残ってて、恋愛がうまくいかない、とか
そんな話しじゃなければいいのに、と願いながら聞いていた。

「昔、そう、500年ぐらい前かしら。
お城の立て替えの時に、人柱の募集があったのよ。
あなたは、自分の娘を差し出しているわね。」

「え?自分の娘を、ですか?!」

想像もしていなかった。
母親が、自分の娘を生け贄に差し出す?
そんなひどいことを自分がした?
自分が人柱に立った、と言われた方が、まだましだったと、
ケイコは今さらながらに思った。

「そう、そう…あなたの娘は、障害を持って生まれたのね。
あの時代、そのような子供を産んだことで、
あなたは”畑が悪い”と、家族や親類にさんざん罵られたの。
あの頃は、障害のある子供が産まれたら、
家族はひた隠しにして、表に絶対に出さなかったのね。

娘は、本当に優しい子だったけれど、
言葉も話せなかったし、大人の言うことは、ほとんど理解できなかったから、
暗い土蔵の中で、息を潜めるような暮らしを余儀なくされていたの。

それでも、村の噂はあっという間に広がるでしょう。
あの家に近づくと、病気がうつる!って言われて、
家族みんなが、村八分のような辛い暮らしをしていたわね。」

ケイコは、他人事のような気持ちで聞いていた。
いや、そうしないと、自分を保っていられないような気がした。

泣けなかった……

<ひとばしら〜その2〜>につづく

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等身大の彼とハチドリ

<少年とハチドリ>
<青年とハチドリ>
<彼とハチドリ>
<本当の彼とハチドリ>
のつづきです。

「にゃお〜〜〜〜〜〜〜ん」

わ!!
なんてでかい猫!!
真っ白な、毛足の長いペルシャ風の猫がいる。
部屋一面を埋め尽くしている。

クリキンディの長い心の旅で、
ようやく奥目王子の心の部屋に辿り着き、
アーリマンの闇を祓って、やっと本体と話ができる思ったのに…
なんじゃそりゃ〜〜〜

やっぱり、誰かに守ってもらわないと、不安でしょうがないんだね。
わかった。
ふわふわで気持ちいいから、このままこの化け猫ちゃんにいてもらおうね。

で、思い出したの?君がこの人生で本当にやりたかったこと。

「大きな橋をかけたかったなぁ…。アーチのキレイな白い橋。」

「それ、映画”素晴らしき哉、人生!”の人と一緒だね!
本当の橋をかけることはなかったけど、
人の心に橋をかける素敵な映画だったよ。」

「あとは、どんなことしたい?」
「そうだな…あんなことや、こんなことや…」

しばらく話していて、ふとクリキンディが気付いた……

「あれ?ね、君、大きくなってるよ?」
「え?ホントだ!」
「ほら、現実世界と同じ大きさになってるよ、やった〜!自分を取り戻したんだよ。」

クリキンディは、奥目王子と手を取り合って
ぐるぐる回り続けた。
すごくうれしくて、ずっと踊り明かしたい気分だった。

おめでとう!
もう大丈夫だね。

ぼくも、ハチドリのクリキンディじゃなくて、
本当の自分に戻るよ。
また明日。
今度は本当の自分たちの姿で話をしようね。

(完)

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