産地直送の野菜売り場が大好きなうちの母、果物売り場でよくこんなことを言います。
「この果物の糖度は〇〇度なんだってよ、きっとおいしいわねー」
最近は、こういう味の基準を、数値に置き換えることができるんですね。え?そんなの最近の話じゃないって?はぁ…すみません。
目安としてはとても便利なものだと思います。
でもねー、味覚ってものすごく微妙なものじゃないですか?
例えば、アイスクリームは温度が低いため、甘みを感じにくく、室温では甘過ぎるほどの糖度にしないとおいしく感じないですよね。
つまり、温度によって味覚は変わります。
また、同じものを食べても、人によって、「おいしい」と感じる人もいれば「おいしくない」と感じる人もいます。
野菜やお米を「甘い」と感じる時もあり、天然水を「甘い」と感じる時もあります。
野菜やお米ならまだわかるけど、お水には糖分などないのに、なぜ甘いと感じるんでしょうね?
人間の味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つだと言われます。
でも、実はそこに嗅覚や触覚(歯触り、舌触り)、温度や湿度(水分量)などが加わるわけで、ただ糖度だけを計っておいしいですよ、というのはちょっと乱暴な気もしますね。
複雑だからこそ、数値化することで、誰にでもおいしさがわかるようにがんばっているんです、と測定側の方は言うかもしれませんが、
では、個人の好みについてはどう考えればいいでしょうね?
すべての要素を完全に数値化できたとしても、
それを「おいしい」と感じる人と、「おいしくない」と感じる人は必ずいます。
それは個人差だからしょうがない、と思われるかもしれませんが、
では、同じものを食べたのに「昨日はものすごくおいしいと感じたけど、今日はそんなでもない」という状況については、どのように考えればいいんでしょう?
人間の味覚は、一定じゃないからこそ数値化する必要があるんだ!
と思いますか?
なぜ味覚は変わるんでしょうね?
あんなに好きだった彼のことが、大嫌いになる日が来るなんて……あ!違った!
あんなに好きだった食べ物なのに、嫌いになることもありますよね。
大好きなものでも、3食3日同じものはさすがにキツいなぁとか思いますよね。
それは自分の身体が、その食品(の成分)を必要としているか、していないか、ということに関わっているような気がしませんか?
ものすごく汗をかいて喉が渇けば、お水が美味しく感じるように、
自分にとって、今足りないものを口にできた時には、足りている時よりもずっとおいしいと感じます。
つまり、人間にとっての味覚とは、自分の身体を健康に保つための、大切な指針となるセンサーなんですね。
だから自分に必要なものは「おいしい」と感じるし、必要ないものは「おいしくない」と感じます。
(※ものすごく足りないものは、なかなか吸収しづらいため、「嫌い」と感じることも多いです。)
自分に必要なものは、自分の身体が一番よくわかっています。
ただし、味覚や嗅覚というセンサーがちゃんと機能していることが大前提ですが。
いろんなものを機械に任せるようになって、また似たような味や香りのする「偽物」を化学物質で合成して作って売るようになってから、すっかり人間のセンサーは鈍ってきています。
また、「自分の好みだけで、食べるものを選んではいけない、バランスよく◯◯品目を摂取することが大事」というような、子供の頃からの躾などのために、せっかくのセンサーのスイッチを自らオフにしてしまっている人もいるかもしれません。
どんな機械よりも優れたセンサーを、生まれながらに持っているにも関わらず、
糖度しか計れないような機械を、あなたはまだ頼りたいですか?
ええ、いつも、果物売り場で、母親と軽くケンカしてしまうクリキンディです。(笑)