命令形のない命令文


ゆうべのこと、
寝たきり介護生活が2年になろうとしている父が、
母に向かって言いました。

「もう俺は生きている甲斐がないよ。もう今晩死んだっていいと思ってる。
もういいだろ?」

そう言われた母、
「あなたがそうしたいのならいいですよ」
って答えちゃった。

父は
「そんな言い方ないだろう〜。
そんなこと言わずにがんばって長生きして下さいとか言われたら、
もうちょっとがんばろうと思うけど、
そんな風に言われたら、本当に生きてる甲斐がないよ…」
とお拗ねになられまして………

どうやら
「お願いあなた、私を置いて行かないで、私をひとりにするなんてひどいわ」
とか答えてくれることを期待していた模様です。

母は仕方なく、
「それなら、孫がもうすぐ夏休みで帰ってきますから、
せめてそれまでがんばってください」
って言っちゃった……

あ〜あ。

この夫婦の探り合いの、根比べのような会話は、
聞いていてほんと疲れるわぁ。

「正しいネガティブのススメ」というブログをご存知でしょうか。
心理セラピストの杉山隆史さんという方が書かれた過去記事に
「命令形のない命令文」
というものがあるのですが、
うちの父親が言っているのがまさにこれです。

ごく簡単に説明すると、
「ああ、もう私死にたい…」
って言う人は、本当に死にたいわけじゃなく、
「何言ってるの!死んじゃだめ、あなたは生きる価値のある人なんだから」
って言って引き止めて欲しい時であるってことですよ。
つまり、うちの父の場合、
「自分は必要とされている」ことを認識したくて、
相手にそう言ってもらえるであろう言葉を発しているわけです。
無意識に「レスポンスの予想できる話題」を振っていると言ったらいいのでしょうか。

これは、いろんなケースがありますよね。
「あ〜あ、もう会社やめちゃおうかなぁ」とか言われたら、
「え?やめないでよ、あなたが抜けたらさみしいわ」って言いたくなるし、
「私はほんとに記憶力が悪くてみんなに迷惑かけてばかり」とか言われたら、
「そんなことないよ、この間だって、あなたが覚えていたから助かったのに」
って言っちゃいますよね。

しかし、残念なことに、
うちの母親は、この「命令形のない命令文」にひっかからなかった!
まぁ、厳密に言えば、だめ押しされて、仕方なく、
命令形のない命令文に半分従った、って感じではあるのですが。

こんなすれ違いの会話になる理由は、
父と母の価値観が大きく違うからなのです。
つまり、父が考える「愛の形」とは、
お互いを求め合い、必要だと表現し続けること。
母の考える「愛の形」は、
お互いを尊重し合い、完全に自由であること。

だから、父は、母に嫉妬という形で愛情を表現してもらいたくて浮気し続け、
母は、父への愛情を表現するために、嫉妬せずに許し続けた。

ああ、ほんとにかわいそうな夫婦。
子供が生まれていなければ、とっくに別れていたと思う。
子供って、私じゃん!!
あ〜あ、あたしのせいじゃん……

私なんか生まれない方がよかったんですよね、きっと…。

あ…
命令形のない命令文、発動しちゃいましたね〜w


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