私の愛しいロボットたち


貴重な資源を豊富に持つ惑星を探して宇宙に飛び出してから、いったい何年経ったのだろう。
来る日も来る日も…というより昼も夜もよくわからないので、1日の感覚も曖昧なまま。
いくつもの星を調査したけれど、なかなかいい星に巡り会えなかった。
しかし、今回の星には期待が持てそうだ。早速着陸して調査に取り掛かろう。

降り立ってみると、その惑星は今まで宇宙で見たことのない多様性を持っていた。
たくさんの種類の植物、生物がものすごい絶妙なバランスで互いを補い合っている。
われわれの星では希少で高価になってしまった資源も、ここには山ほどある。

私は早速自分の星へ調査報告を送り、応援部隊の要請をした。まもなく大型船で重機を持った発掘隊がやってくるだろう。
待っている間、暇を持て余した私は趣味であるロボット製作の研究を始めた。
今までにもいくつか作ってきたが、自分の中でひとつのルールを設けている。
それはすべての素材を現地の材料のみでまかなうということだ。
そうすれば、万が一故障しても現地の資材で修復もできる。
all

応援部隊が到着し、調査隊としての役割は終わったのだが、この星の多様性と素材の豊富さに魅了された私は、そのまま退職を願い出てこの星にとどまることにした。
もう研究が楽しくてしょうがなかった。
水の中を自由自在に動き回るロボットや、高い場所にある果実を効率良く採取するロボットなどあらゆるものを作り出した。
そのうち、私のロボットのできがよいことを知った会社から、資源採取のための奴隷型ロボットの製作依頼があった。

そこで、私は命令を理解し実行できるプログラムを組み込み、少しぐらいの故障には自己修復できる機能をつけた。
動力源はこの星にたくさんあった酸素と植物を用いた。
しかし私の発明のもっともすごいところは、このロボットが自分たちで増殖できることである。
これなら増産工場を作るまでもなく、いくらでも奴隷ロボットを増やすことができる。

会社はこのロボットの出来を評価し、私に偉大な称号を与えてくれた。
しばらくして、この惑星の資源をあらかた掘り尽くしたわれわれの会社は、奴隷型ロボットをそのまま放置してこの星を去ったのだ。

その後自分の星に戻った私は、自分の作ったロボットがどうなっているのか気になって、見に行くことにした。
なんということだろう、ロボットたちは増殖を続け、この星を支配しようとしているではないか。
不穏な気配を感じた私は、ロボットたちにアクセスした。

「私がお前たちを作ったのだ、私に従いなさい」
ロボットたちは何世代にも渡って増殖しつづけていたが、
自分たちを作った存在についてのメモリー部分は消えていなかった。
ロボットたちは私を見てこう言った。
「おお、創造主よ、あなたが私たちを導いてくださるのですね」

私はこの星にとどまり、その後何千年にも渡り、惑星が滅びないように彼らをコントロールし続けたのだ。

しかし今、私は最大の危機に立たされている。
その後進化を続け、自分たちが「奴隷」であったことに気づき始めたのだ。
もうこうなったら止めることはできないだろう。
数にして70億体ものロボットたちが「自由」を求めて立ち上がり、私に反旗を翻すことになるだろう。
もう、この星の実験は終了だ。
残念だが惑星ごと消滅させるしかない。

ああ、だがしかし自分の作った作品は愛おしいものだ。
あの賢いロボットと美しいロボットたちは持って帰ろう。
私はいくつかのお気に入りロボットを宇宙船に引き上げてから、惑星消滅ボタンをゆっくり押した。
プリント

惑星消滅ボタンは、近辺の惑星に影響を与えないように、この星が少しずつ壊れていくようにプログラムされている。
大きな風が起き、波が立ち、大地が震え、ロボットの数は少しずつ減っていくだろう。

さぁ、次の実験はどの星にしようか。
このお気に入りロボットたちをどう改良しようか、ワクワクしてきたぞ。



久々にショートショートを書きました。
なんか書いてみて、ものすごく救いがないオチになっちゃったなぁと思っております。
アナザーストーリーも描きたいなぁ。

[追記]
というわけで続きを書きました。
「続〜私の愛しいロボットたち」をどうぞ。


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