タクシー運転手とチョコレートドーナツ


友人に勧められていたものの、なかなか食指が動かず、先日BSで放送されたものをやっと見ました。

「タクシー運転手」のストーリーを簡単に言うと、
1980年の韓国で起きていた光州事件をテーマにしたもので、
これが正しく報道されていないと知り、ひとりの外国人ジャーナリストが命がけで現場に取材に行く話です。

うん見てよかった、見るべきだった…という気持ちと
ちょっとスッキリしない気持ちが混じってます。

見てよかったと思う点

まず「光州事件」というものを知らなかったことに気づけたこと。
1980年はインターネットどころか携帯電話すらありません。
世界のニュースは新聞とテレビ以外で知ることができない時代でした。

すぐ隣の国で起きていることもわからなかったわけですが、
映画の中では、光州の隣の町にすら正しい情報が伝わっていないと描かれています。

私たちは今でも、2020年になった今ですら、テレビや新聞などのメディアの報道が正しいと信じています。
ネットでいろんな情報が探せるようになったとは言え、それも玉石混合ですし、そこにもすでに情報撹乱のための予算が使われているという噂があります。

これは今に始まったことじゃなく、何百年も前から使われている手なんですね。
情報戦を制したものが勝つんです。

そのような重たいテーマを描いた映画ですが、主人公のタクシー運転手のキャラクターがうまく雰囲気を和らげてくれている印象でした。

モヤっとしたところ

事実を元にした話ではありますが、映画ですのであえて派手な演出をしているところはあるだろうと思います。

ネタバレになりますが、最終的にこの映画の中では主人公の運転手だけではなく、光州の学生やタクシー運転手たちも大活躍してくれています。
というか命をかけてめちゃくちゃ危険な行動に出て、大怪我や命を失うなどしてしまいます。

なんとか現場で起きている実情を、世界中に発信して欲しいという願いを持って、外国人ジャーナリストを守り続けるわけです。

結果としてそれはなんとか成功し、報道されることになったのですが、映画の最後に、そのご本人がインタビューで登場し、
「あの時自分を乗せてくれたタクシー運転手にとても感謝している、もう一度会いたい」と語るおまけ画像が入っています。

彼が「自分を乗せてくれた運転手」のみについて語っていることで、それ以外のタクシー運転手たちの命をかけた行動が、ただの映画の演出に過ぎなかったことがわかってしまい、ちょっと興ざめしちゃいました。

一番モヤっとすること

でもなにより一番モヤっとするのが、このような「報道の裏事情を暴く」映画が他にも山ほど製作されているにも関わらず、未だに社会がなにも変わっていないように見えることです。

歴史は勝者のストーリーである、という言葉もあるように、私たち一般市民にはひとつの偏った視点しか与えられません。

抑圧された側、不当な扱いを受けた側は、映画のようなフィクションという形でしかその思いを伝えることができず、なんだかあまりに救いがないと感じます。

少し前に見たこの映画「チョコレートドーナツ」もそうでした。

こちらは1979年に、ゲイカップルがダウン症の男の子を引き取って育てようとするのですが、世間の大きな偏見に阻まれてものすごい苦戦を強いられる話です。

ネタバレになるので詳しくは言いませんが、あまりに救いのない結末にドヨーンとしてしまいました。

光州事件にしてもLGBT問題にしても、当事者以外の人は知らないことが多すぎるし、何十年経ってもほとんど何も改善されていないということに気づかされて愕然としてしまいます。

私に何ができるだろう…
ブログで感想を述べるぐらいでは何も変わらないかもしれないけれど、せめてハチドリのクリキンディのように行動しようと思います。

今日ご紹介した映画はどちらもamazon primeで見ることができます。
少しでも興味を引いたならぜひご覧ください。
そして感想を誰かに伝えてみてくださいね。


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