宇宙人の悲劇


宇宙人A:さぁ、次の調査対象は太陽系の3番目の惑星だな。この星の住人は地球と呼んでいるのか。

宇宙人B:いや、この星には様々な言語があるから、呼び方はもっとたくさんあるようだ。EarthとかTellus、Terra、Tierra、Erde、うーむ、どの言語で話しかければいいのか下調べが必要だな。

A:そうか、この星の住人と交流するための言語を今のうちに左脳にインストールしておこう。

B:ああ、到着まであと18時間あるから、インストールしながら一眠りしておくか。

〜〜自動操縦の宇宙船は順調に地球へ近づいていった。〜〜

A:では最初に交流する対象は、あそこを歩いている女性にしよう。

B:よし、この地域の平均的な姿に擬態するぞ。

A:こんにちは。

女:え?誰?マジキモいんすけど、男か女か若いのか年取ってんのか、かっこいいのか悪いのかもう混じり過ぎてわかんない!とりま逃げよ。

B:お待ちくだされ。

女:わ、イミフ!こっち来んなって!げきおこぷんぷん〜〜

A:怪しまれてしまったな。仕方ない場所を変えよう。

B:それにしても、言葉がよくわからなかったぞ。いったいどこの言葉だったんだ…。

〜〜再び場所を変えて小学生男子に話しかける宇宙人〜〜

A:こんにちは。

男子:じぇじぇじぇ〜〜〜!(逃げていく)

B:じぇじぇ?そんな言葉はインストールされていないぞ。

A:一旦宇宙船に戻って作戦を練り直そう。

〜〜宇宙船の中〜〜

A:おい、よく調べてみると、ひとつの言語にも何十種類もの変化パターンがあるぞ。

B:なになに、方言というのか、狭い地域のみで通じる言葉のようだな。

A:この星の住人は広い範囲でコミュニケーションを取りたくない種族ということか。

B:タイムサーチで歴史を見てみると、同じ星に住んでいる仲間同士で戦いを繰り返しているな。

A:ふうむ、ワレワレに敵意がないということを伝えてからでないと、近づくのは危険ということなのか。

B:仕方ない、時間はかかるだろうが、すべての言語をインストールして、この星でもっとも数の多い種族からコミュニケーションを図ろう。

〜〜1年後〜〜

A:ふあぁぁぁ、なんと言語をインストールするだけで一年もかかってしまった!

B:まぁいい、これでどの民族のどの方言でも大丈夫ということだ。

A:よし、この星でもっとも数の多い種族に接触を図るぞ。

B:ああ、どんな場所にも分布しているな。できればリーダー格に話しかけたいんだが、どこにいるのかわからんな。仕方ない手当たり次第聞いてみるか。

A:随分小さいな、よしこっちも小さく擬態して…。ちょっとお話を聞きたいんですが…

バクテリアその1:なに?

B:あなたがたのリーダーはどこにいらっしゃるんでしょう?

バクテリアその2:リーダーって何?ぼくはそろそろ分裂するんで‥‥‥

A:あれ、ちょっと待って。

B:どっちに話しかけるか迷ってたらまた分裂したぞ。ああ、会話にならないじゃないか、なんてことだ。

A:一旦宇宙船に戻って作戦を練り直そう。

〜〜宇宙船の中〜〜

A:今まで調査した星の中でもっとも調査が難しいな。

B:一旦ワレワレの星に戻って上司の指示を仰ごう。

A:そうだな、とりあえず「どんどん分裂する小さな種族がこの星を支配していること、他の種族とのコミュニケーションを取りたがらず、戦いの多い危険な星」であることは報告できるからな。

B:ああ、あとは星を一回りして、映像を記録してから戻るとするか。

〜〜映像撮影飛行中〜〜

地球上では…

オカルト好きな人「わお!UFOのビデオ撮影に成功した!テレビ局に高く売れるぞ。」

終末論を信じる人「おお!神の降臨だ。正しい宗教を信じた人間だけを救って下さる!」

台湾人「お祭りで飛ばすランタンだね。」

空軍の軍人:ここ1年ほど地球の上空を飛び回っている未確認飛行物体があります。地球の地形を観察して調査している模様。我々とコミュニケーションを取る様子はなく、この後大編隊を組んで侵略を企んでいる可能性があります。

空軍の指揮官:危険だ!攻撃される前にこっちから撃ち落とせ!

ドッカーーーーーーン!!


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